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生活と考察の記録

生活保護基準の富山地裁の勝訴判決&昨年の富山旅について

富山地裁で原告側が勝訴

2024年1月24日に富山地裁で判決が出ました。2013年の生活保護基準引下げ訴訟に関してです。基準引下げは違法である旨が判示された。

これで同種の訴訟では、地裁では14勝11敗、高裁では1勝1敗となった。厚生労働大臣に広範な裁量が認められる生活保護基準に関する訴訟で異例の事態となっています。

昨年富山に行った時にお会いした弁護士の方や活動をされている方をオンラインではありますがお話を聞けて嬉しかったです(後半に謎の旅の振り返りをします)。

同日行われた判決の報告集会では、原告、支援者、弁護士、富山で大学生等への生活保護適用拡充の活動されている方、他都市の原告などからお話がありました。

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一体どれだけたくさんの命を見送れば、世の中は変わってくれるんだろう

この提訴から9年が経過しています。原告の方で亡くなっている方もいらっしゃいます。判決の報告集会では原告の方どうしで長生きしようと声をかける場面や原告が死亡した際に訴訟を引き継げるように訴訟継承に関するお話もありました。

富山地裁の訴訟でしたので、林夏生さんの訃報に接したことを意識していました。林夏生さんの杉田水脈さんへの抗議集会で次のように言ったとされています。

一体どれだけたくさんの命を見送れば、世の中は変わってくれるんだろう。

私は大学の教壇でずっと学生たちに「政治を諦めるな」って言ってるんです。「諦めたくなるような政治」はどうか終わりにして下さい。

サラ・アーメッドさんと高島鈴さんからも引用させていただきます。サラ・アーメッドさんの「戦いとしてのセルフケア」はとっても示唆に富むエンパワーメントされる文章です。

私たちの中には、もともと生存することが想定されていない人々もいるのだということを、オードリー・ロードは指摘する。特定の身体を持つこと、特定の集団の一員であること、何者であるかが、そのまま死の宣告になることがある。自分らしく、どこかで、誰かと共に生きることが許されていないとき、生存すること自体がラディカルなアクションとなる――最後まで存在しないことを拒否すること。ーサラ・アーメッド/浅沼優子訳「戦いとしてのセルフケア」『現代思想』51(6)

元気がなくても、身体を動かすことができなくても、この社会に抗うことはできる。生存すること自体が、すでに抵抗だと――「弱いまま生きていく」ということをまず肯定したい。高島鈴に聞くこれからの社会のこと | CINRA

「生存は抵抗」だ。高島鈴さんはよくおっしゃっています。南米のフェミニズム運動のNi Una Menos は「だれひとり欠けさせない」という意味だそうです。

また一方で、亡くなった方との向き合い方について最近読んだ文章を紹介します。

小松原織香さんの『当事者は嘘をつく』に対して、小西真理子さんが『歪な愛の倫理』の中で次のように触れています。

私は、死んでいく者たちの願望や死そのものをどうしても否定したくない。…死を肯定も否定もせずに、その人の人生を判断したり評価したりするのとは別の仕方で、亡くなった人の存在そのものや、確かに生きぬいた姿、そして、もしその人が身近な他者であったとするならば、その相手が自分に与えてくれたり残してくれたりしたものを(よいものも悪いものもまとめて)受け止めて、肯定することなのではないだろうか。ー小西真理子『歪な愛の倫理:<第三者>は暴力関係にどう応じるべきか』(筑摩書房)211-212頁

それに対して小松原織香さんが応答した文章も紹介させていただきます。(ちなみにこの書評は牧瀬茜さんという以前このブログでも紹介したストリッパーの方の記事を読みたくて出会いました)。

 「あなたとは一緒に行けない」
 私はサバイバーになってしまったから、死や暴力に向かう人たちを見送ることになる。命ある者は「生きる」か「死ぬか」のどちらかの状態しかなく、両方は選べない。小西は生き延びるという言葉に対し、「死者と生者の世界のあいだにある僅かなつながりからも死者を切り離してしまうような響き」を指摘する。その文学的な示唆は理解できても、「彼女がここにいない」ことは、私にはどうしようもない断絶としか感じられない。ー一緒に死ねなかったから、サバイバーになった|筑摩選書|小松原 織香|webちくま (webchikuma.jp)

 

富山旅の振り返る

2023年10月に1泊2日に仕事で富山へ行きました。海鮮料理やチャーシューの写真などが出てきますのでご注意いただきますようお願いいたします。

 

富山駅は主要ターミナル駅にも関わらず、駅を出た瞬間にベンチで寝ている方がいらっしゃって、そのこと自体がとっても素敵な空間に感じました。排除型ベンチばかり見ていますので。ちなみに富山で最初に見た排除型ベンチは富山市役所でした…。富山県生活保護率が全国最低なのですが、そういうとこやぞって心の中でつっこみました(いや、他の仲間に写真見せてつっこんでましたけど)。

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せっかく富山へ行くならと、今回の訴訟の代理人もされている弁護士の方にお会いしたい思い、何の面識もないにも関わらず一緒に食事へ行きたいとメッセージを送り声をかけたところご快諾いただきました。この時の私のメッセージで私が参加している活動を紹介したのですが、こうやって自分を権威づけてお誘いしてて我ながら最低だぁって感じで…。しかもこちらからお誘いしたのに、お店の予約とか、当日SNS繋がりの富山で生活保護関連の活動をされている方も1名追加になったのですがその予約の変更とか、何から何までお世話になってありがとうございました。

海鮮料理おいしかったですし、富山の生活保護を巡る状況、お互いの活動、生活保護の法的な解釈などについて色々とおしゃべりさせていただきました。

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ひとまず今回の訴訟で良い結果が出て良かったです。おめでとうございます。もちろん弁護士の方だけでなく、より多くの方におめでとうございます。これからも戦いは続きますがひとまず今はおめでとうの気持ちです。

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ジブリに関する複雑な気持ちがありますが、それはまたいつの日か…。)