Dare Together

生活と考察の記録

泉佐野市生活保護の情報公開請求資料について

「泉佐野市の日本一ひどい生活保護広報」というブログを2025年6月7日に書きました。

泉佐野市のHPでは審査請求期間が3カ月以内が正しいにもかかわらず60日以内と明らかな誤りがありました。

その他にも生活保護の申請権を侵害する内容が記載されていました。具体的には「指導や指示は必ず守らなければなりません」「わがままや、身勝手な生活は、道義的にも許されません」「『生活保護』のしくみなどについて説明しましたが、もう一度、自分たちの力で生活ができないかよく考えてください」などと記載されています。

shientoha.hatenablog.com

私のブログを見て泉佐野市に指摘をした方がいらっしゃって、泉佐野市は2025年6月10日にホームページを改訂いたしました。しかしながら、その内容は審査請求期間を修正したのみです。生活保護の申請権を侵害する内容はそのままとなっております。

www.city.izumisano.lg.jp

 

大阪府に監査情報などの情報公開請求を行いました。実施方針のみ早めに公開されていましたが、ようやく監査資料も公開されましたので共有いたします。

drive.google.com

 

これから情報公開請求で得た資料の内容を検討して、泉佐野市や大阪府に対して連絡を取っていこうと思います。

もしブログを見た方で資料を見ていただいて、問題点や疑問などがありましたら参考にさせていただきたいので下記のフォームから教えていただけると助かります。なお、回答内容についてはコメント者のお名前を明示せずに公開させていただく可能性がございますのであらかじめご了承ください。

また、泉佐野市の生活保護利用者、元生活保護利用者、支援者などの方で、泉佐野市の生活保護行政の実情について詳しい方がいらっしゃいましたら、お名前(匿名可)とメールアドレスを教えていただけると助かります。こちらから確認の連絡をさせていただく場合がございます。よろしくお願いいたします。

docs.google.com

 

【10/6(月)】読書会『荷を引く獣たち』

スナウラ・テイラー著、今津有梨訳『荷を引く獣たちー動物の解放と障害者の解放』(洛北出版)の読書会をします。

『荷を引く獣たち:動物の解放と障害者の解放』、スナウラ・テイラー著、洛北出版、ISBN9784903127309 | 洛北出版

 

10月6日(月)19:30から開催します。

 

初回の範囲はプロローグからII の動物倫理を不具にするまでを扱います。

 

初回の範囲を誤っていました。

 

初回ははじめから第2章の「障害とは何か?」の52頁までを範囲といたします。

 

初回は第2章の

 

興味のある方は下記リンクから登録・連絡いただければ幸いです。

docs.google.com

 

 

 

「反抑圧×フェミニズム×ソーシャルワーク」をテーマに継続した読書会を始めたところですが、この本の読書会のみの参加希望も大歓迎です。

 

前回の読書会の参加者は同じリンクで始める予定ですので連絡なしでもご参加ください。

 

よろしくお願いいたします。

「桐生市問題」再考:レイシズムとインターセクショナリティ

桐生市の生活保護行政において、1日1,000円の分割支給をはじめとして様々な人権侵害が明らかになりました。これに対して「桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会」が設置され、2025年3月28日に「桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会報告書」(以下「報告書」と呼びます)が提出されました。
 
この記事では「報告書」で記載されている事案3について掘り下げて検討していきたいと考えています。
 
事案3について報告書から引用すると次のとおりです。
第3 事案3 
生活保護支給決定の際、9月・10月分を決定すべきところを、10月分の支給を決定しなかった。その後、10月分の支給決定については、11月分の支給決定とともに約2~3週間遅延した。9月分の保護費支給は支給決定から約3週間後、10月・11月分の支給は本来支給決定すべき日から約1か月後となった。 受給者からは、決定通知書を受け取っていないこと、また、9月分保護費の受領印を押していないことの申し出があった。担当CWは8月に申請者本人が保護相談に来所した際、本人の意思で保護申請をしなかったと認識していたが、「受給者は担当者から生活保護を実施できないと言われ申請できず9月に弁護士同席で申請できたとの認識であったこと」が報道された。(19)

 

「いなかったこと」にされた外国人

事案3については事前に報道されていました。例えば、2023年12月12日付け東京新聞の次の記事を参照してください。

 
この報道より事案3の当事者は外国人であることがわかります。しかし、「報告書」では外国人であることが不可視化されています。外国人が「いないこと」にされています。外国人が抹消されています。「報告書」から事案3の当事者が外国人であると推知することができるのはわずかに次のところだけではないでしょうか。
事案3当事者の属性(日本語での意思伝達が不十分な可能性)を考慮すれば、生活保護法に関する知識が不十分であることが推測され、CWからその旨の指摘を受けたからこそ、来所目的であった生活保護申請をしなかったと考えるのが合理的である。(56) 
 
果たして外国人であることの影響は、「生活保護法に関する知識が不十分であることが推測され」ることだけでしょうか。
 
現場の生活保護担当者が外国人の生活保護申請を受け付けるときに最も留意することは何でしょうか。おそらくそれは実施責任ではないでしょうか。実施責任とは、どの福祉事務所が生活保護を実施する責任を負うのかということです。別冊問答集という生活保護担当者が参照している通知の中に次のような問答があります。

問13-32  外国人保護の適用対象と実施責任

(問)

外国人の保護の適用対象及び実施責任について教示されたい。

(答)

外国人(日本国籍を持たない者をいう。したがって無国籍の者を含む。)は法第1条及び第2条により法の適用対象とならず,法による保護は受けられないが,昭和29年5月8日社発第382号厚生省社会局長通知により,当分の間法による保護等に準ずる取扱いをすることとされている。

対象となる外国人は,適法に日本に滞在し,活動に制限を受けない「永住者」,「定住者」等の在留資格を有する外国人である。

具体的な在留資格等としては,

① 「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)別表第2の在留資格を有する者(永住者,日本人の配偶者等,永住者の配偶者等及び定住者)

② 「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(平成3年法律第71号。以下「入管特例法」という。)の特別永住者

③ 入管法上の認定難民

である。

なお,入管法別表第1の5の特定活動の在留資格を有する者のうち日本国内での活動に制限を受けないもの等の上記①~③以外の者について疑義がある場合には,厚生労働省に照会されたい。

外国人保護の実施責任は,入管法に基づく在留カード又は入管特例法に基づく特別永住者証明書に記載された住居地を基準として定めることとされ,この点で法による保護と異なる取扱いを受けるのである。

 
「事情があって同居していた親族と別居していたところ、別居前の住居地に自分の荷物が残されていることの指摘を受け、生活保護は受けられない旨の説明を受けた。」(54)ということです。その背景には生活保護担当者が「外国人の場合は在留カード等に記載された住居地にて生活保護申請を行うのが原則である」という認識があったからかもしれません。この原則が形式的に貫かれると、DV被害者などの場合には問題が生じます。そのため別冊問答集において次のような問答もあります。

 問13-33   外国人であるDV被害者の取扱い

(問)

配偶者による暴力等(以下「DV」という。)被害から逃れるために,入管法に基づく在留カード又は入管特例法に基づく特別永住者証明書(以下「在留カード等」という。)に記載された住居地と異なる居住地で生活している外国人に係る保護の実施責任はどうなるのか。

(答)

入管法又は入管特例法上,外国人が住居地を変更した場合は,原則,新住居地の市町村に在留カード等を提出した上,新住居地を届け出なければならないことから,当該外国人が住居地の変更届出を行うことが可能な場合には,同届出を求めた上で,新住居地を管理する保護の実施機関が負うこととなる。

実施機関においては,当該外国人が新住居地をDV加害者に把握されることについて懸念を申し立ててきた場合等には,関係市町村の住民票担当部署に対して,当該外国人がDVの被害者であることを周知するなど,不利益を被ることのないよう十分に配慮されたい。

なお,例外的に,在留カード等に記載された住居地と実際の居住地が異なっているものの,住居地の変更届出を行うことができない状態にあると認められた場合には,実際の居住地において生活保護を適用して差し支えない。

この問答が存在していること自体が、この問答を必要とした立法事実があったからこそ、つまり多くの自治体で外国人のDV被害者などの生活保護適用で問題が生じていたからではないでしょうか。桐生市の生活保護の運用はこの規定に反しています。

 

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。原則として在留カード記載の住所地で生活保護が行われ、例外的にDV被害者等の場合には異なっていても良い。その原則と例外の境界線がどこにあるのか、窓口の職員が決裁を挙げた場合に上司にどんな指摘、指導、助言がされるでしょうか。

 

生活保護の監査は濫給防止を偏重しており、漏給防止の観点があまりにも乏しい。その結果として、グレーなものは支給しないようにする事なかれ主義につながる可能性が高いのです。

 

もちろんDV被害者などの生活保護への水際作戦は日本人に対しても現状行われており、大きな問題だと言えます。しかし、外国人の場合はより大きな抑圧に晒されやすいこと、それは制度的に引き起こされていることがわかるのではないでしょうか。

 

さらに、この事案では生活保護の申請したにも関わらず長期間放置されました。これについて「報告書」の検討では、審査請求ができる旨の解説を行っています。
生活保護法24条3項は、保護開始決定・却下決定に関する通知を書面で行うことを要求し、その通知が、申請者に到達するまでの時間的な制限を設けている(資料8-50)。すなわち、同法24条5項は、保護決定(却下決定)を申請があった日から14日以内にしなければならない義務を定め、「扶養義務者の資産及び収入の状況の調査
に日時を要する場合その他特別な理由がある場合」に限って、これを30日まで延ばすことができるとしている。しかし、30日を超える場合は許容されていない(同法7項参照。同項の規定により保護申請者は審査請求を行うことができることになる。)。(58-59)
しかし、外国人の生活保護は審査請求できません。外国人は生活保護法がそのまま適用されているわけではありません。一部の在留資格のある方に限って、行政上の措置として生活保障が行われています。外国人の生活保護に関する事案を検討しているにもかかわらず、何らの注釈もつけずに審査請求ができると説明する「報告書」には大きな誤りがあります。
 
桐生市問題の「報告書」では外国人は「いなかったこと」にされています。これでは桐生市の生活保護行政、あるいは生活保護行政全般にあるレイシズムを温存してしまいます。桐生市の生活保護行政が外国人を排除・差別していることが看過・容認され、ノーマライズすることに「報告書」は加担しています。これこそがまさしくレイシズムなのでしょうが…。このように外国人に対する抑圧は不可視化されています。生活保護における外国人優遇という言説は、このように外国人の抑圧を不可視化していることをベースに構成されているのかもしれません。しかし、実際は外国人は日本人より抑圧を受けています。
 
また、この事案3の当事者がどのように入居先に入れたか明らかにされていませんが、その部分を検討すればより広い施策を求めることになったかもしれません。
「日本における『難民・避難民の住まいの実態調査』では「外国籍であることがハードルとなり、候補となる物件が少なかった」という回答が過半数ありました。外国人は住宅セーフティネット法における住宅確保用配慮者にあたります。
 
「DV被害相談を弁護士に行」(56)っていたということですが、いわゆるDV防止法の対象は配偶者からの暴力となっています。配偶者とは、法律婚か事実婚かは問わない、元配偶者であっても婚姻時から継続していれば対象となります。また、同居の交際相手も対象となります。しかし、親族からの暴力はこの法の対象となりません。
 
桐生市においては「DV被害者の市営住宅目的外使用に関する要綱」というものがあるようです。DV防止法の対象からの暴力であれば市営住宅に入居できる制度があるようです。しかし、要綱を見る限りでは親族間の暴力は対象外のようです。
 
また、たとえDV防止法の対象外であっても、女性支援新法(「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」)によって対象となるべきかと思います。しかし、現段階では桐生市の市営住宅への入居はDV防止法を基礎にしているようです。
 
なお、移住連女性プロジェクトは「困難な問題を抱える外国人女性への支援に関する要請書」を出しています。「外国人女性を念頭においた記載は殆どな」いため、「外国人女性が具体的支援の対象から事実上除外されてしまうことが強く懸念される」としています。ウィシュマ・サンダマリさんの例などを挙げています。

以上のように、貧困、女性、外国人、親族間暴力の被害者/サバイバーなどが重なり合ったところで行政による暴力が起こっています。

ところがこのような重なり合っていることへの検討が全くなされていません。より広く深く検討をすれば、より大きな改善の提言ができたのではないでしょうか。外国人に対する生活保護問題が正面から問われた「安城市事務執行適正化第三者委員会報告書 」と比較すると検討と改善策の差があまりにも大きい。
 

インターセクショナリティの視点

社会的不平等の中で、「いなかった」ことにされることに抗するため、抹消に抗するために重要な概念が「インターセクショナリティ」という概念です。インターセクショナリティは交差性と訳されます。

 

インターセクショナリティという概念はキンバリー・クレンショーが発明しました。「デグラフェンレイド対ゼネラルモータース裁判」という裁判にて、エマ・デグラフェンレイドを含む4人の「黒人女性」がゼネラルモータースを訴えました。しかし、裁判所は女性差別と黒人差別を別々に考え、女性も黒人も採用されているため女性差別も黒人差別も存在しないとしました。しかし、黒人が工場で雇われてもそれは黒人男性であり、女性が秘書や窓口で雇われるとしてもそれは白人女性である。

 

「黒人女性」は「いなかったこと」にされてしまいます。このような「いなかったこと」にする暴力に抗するために新たなフレーミング(枠組み)を必要としました。その枠組みこそが「インターセクショナリティ」です。

 

クレンショーのTEDトークを貼っておきますのでご参照ください。日本語字幕を選択すると日本語字幕が見れます(トランスフォビアを「性同一性障害差別」と訳されていたり気になる点もありますが…)

www.ted.com

インターセクショナリティを説明するものとして、パトリシア ヒル コリンズ・スルマ ビルゲ著、小原理乃訳、下地 ローレンス 吉孝監訳『インターセクショナリティ』(人文書院、2021)の次の説明がよく用いられています。

交差する権力関係が、様々な社会にまたがる社会的関係や個人の日常的経験にどのように影響を及ぼすのかについて検討する概念である。分析ツールとしてのインターセクショナリティは、とりわけ人種、ジェンダー、セクシュアリティ、階級、ネイション、アビリティ、エスニシティ、そして年齢など数々のカテゴリーを、相互に関係し、形成し合っているものとして捉える。インターセクショナリティは、世界や人々、そして人間関係における複雑さを理解し、説明する方法である。(16)

藤高和輝さんは「インターセクショナル・フェミニズムから/へ」『現代思想 総特集 フェミニズムの現在』(2020年3月臨時増刊号、青土社)において次のように述べています。

インターセクショナリティという用語は決して、単なる表面的な「ポリティカル・コレクトネス」のための言葉ではないし、評論家然として世界を俯瞰的に理解するための分析ツールでもない。インターセクショナリティは、差別の複層性・交差性を考えるために、その「交差点」を生きてきた様々な当事者から生まれた概念である。性差別にしろ、人種差別にしろ、あるいは「第三世界」出身の人たちやセクシュアル・マイノリティに対する差別にしろ、それらの差別を別々に切り離して理解していては、それらの「交差点」を生きる者たちの実存は抹消されてしまう。インターセクショナリティはこのような「抹消」に抗する闘いから生まれたのだ。

桐生市の「報告書」では、外国人の存在が抹消されてしまっています。貧困、女性、外国人、親族間暴力の被害者/サバイバーなどが交差する、その「交差点」を生きている当事者の実存が「いなかったこと」にされてはいけないのです。

また、インターセクショナリティは確かに有用な分析ツールではありますが、単に世界を俯瞰して見るようなものではなく、より実存レベルでの他者との出会い/出会い直しのために重要な視点や自分自身が無自覚に権力を持っていて気がつかなかったことに気づくことの大切さを教えてくれるものでもあります。先ほどの文章に続けて藤高和輝さんは次のように論じています。

それはまた、単に〈私〉と〈あなた〉の差異を主張するだけのものではないだろう。有色人種の女性や第三世界出身の女性、あるいはセクシュアル・マイノリティが「白人中産階級の異性愛女性」を中心としたフェミニズムに対してインターセクショナルな現実を訴えてきたのは、そのフェミニズムに異議を申し立てるためだけではなかった。むしろ、彼女たちはフェミニストとして、そのような異議申し立てを行ってきたのであり、言い換えれば、差別や規範を再生産することなく〈私〉と〈あなた〉の接点を紡ぎだし、出会い直すためにこそ、声を上げたのではないだろうか。インターセクショナリティは、「私たち」の内部の差異を主張しながら、しかし、〈私〉と〈あなた〉のつながりを今一度真剣に考えるために導入された用語なのだと言えるだろう。アーメッドが述べていたように、〈私〉が気づかなかった〈あなた〉という他者に「触れる」契機がたしかに存在するのであり、インターセクショナリティにはまさにそのような他者とのつながりをもたらそうとする努力が賭けられているのだ。

運動のインターセクショナリティ

これまで第三者委員会にインターセクショナリティの視点の重要性を指摘してきました。続いて、社会運動におけるインターセクショナリティの視点の重要性について少しだけ触れておきたいです。

桐生市問題に対して、「桐生市生活保護違法事件全国調査団」が結成され、2025年6月25日に「桐生市生活保護行政が真に生まれ変わるために」と題して「桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会報告書」(2025年3月28日)についての見解と要望」が提出され、公開されています。

seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com

その中では、「直接の検討が三事例に留まった」と指摘されていますが、三事例の検討内容について、この記事で私が問題として指摘してきた事柄には触れられておりません。つまり、外国人が当事者の生活保護問題を検証したにもかかわらず、審査請求ができるという誤った解説が行われていることは何ら問題とされておりません。

 

社会運動にとってもインターセクショナリティの視点が重要です。

 

アンジェラ・デイヴィスは『アンジェラ・デイヴィスの教え:自由とはたゆみなき闘い』(2021,河出書房新社)において、「闘争のインターセクショナリティ」(248)と言っています。具体的には次のようなものです。

私がやってきたことは、人種問題、階級問題、ジェンダー問題がそれぞれから切り離すことはできないという感覚を、個人単位の分析ではなく、ムーヴメントや集団的活動の中に反映してきたことだと考えています。(63)

 

Japan Forbesの2021年12月10日付「元新聞記者の精神科医が見た『護られなかった者たち』の水際」において、次のような文章が紹介されています。

英国の小説家J・K・ローリングは生活保護を受給しながら「ハリー・ポッター」を書いたと天池氏は答え、「単に働いていないからずるいというのでは、私たちはとても大きな宝を失う可能性がある」と憂える。

さらに「人はロジックでは動かない。人が動くのは具体的な利益(権益)と感情によるもの」と分析、「そのために分断されたバラバラな『私』を共感可能な『私たち』へと統合する社会運動」が必要だと訴える。

J・K・ローリングを肯定的に紹介した上で、ある種の「連帯」を求める文章となっています。しかし、J・K・ローリングはトランスフォビアとして有名です。(生活保護の価値を投資的に理解する問題はいったん措いておくとしても)この記事を肯定的に紹介した反貧困運動のある活動家がいました。トランス差別への関心の低さにショックを受けた記憶が今も鮮明に残っています。

 

認定NPO法人ReBitの「LGBTQ医療福祉調査2023」の調査報告によると、LGBTQの約半数(46.8%)が過去10年間で生活困窮を経験したとされています。「障害・難病があるLGBTQの62.2%は生活困窮を経験したと回答しました。障害・難病がないLGBTQに比べて、障害・難病があるLGBTQは「生活保護や給付金等の金銭的な支援を受けた/必要とした」割合が7.5倍高く、複合的マイノリティであることにより困難経験の割合が高いと考えられます。」ともされています。

このように生活困窮はジェンダーとセクシュアリティと密接なつながりがあります。

他にも反貧困運動と関連のある組織や共通するメンバーがいる組織の中で起こったハラスメントに対して十分な対応を取らなかった人に登壇を依頼して貧困について語る機会を与えることもあります。

インターセクショナリティの視点の重要性はもちろん私自身にも言えます。私が関わっている活動においても、色覚の多様性への配慮が不十分だったため指摘をしていただいて修正したことがありました。「私たち」がいかに無自覚のうちに誰かを排除した運動を展開しているかということをこの件は如実に教えてくれています。

貧困問題は民族、階級、障害、ジェンダー、セクシュアリティ、地域などと政治的・文化的に交差しています。そのため貧困だけを取り上げて扱うことはできません。

「運動のインターセクショナリティ」を「私たち」は努力して得ていかなければいけません。

まとめ

桐生市問題の「報告書」の事案3について私なりに検討を行いました。

桐生市には事案3について改めて検討をしなおすことを求めます。外国人が当事者であるにもかかわらず、審査請求できると説明しているのは明確な誤りです。

桐生市問題の「報告書」では、外国人が「いなかったこと」にされています。

桐生市の生活保護問題について、日本人が不遇な対応をされて、外国人が優遇されているといった語り方がされることがあります。

この記事で私が検討したように、外国人であるからこそ、より抑圧や暴力に晒されやすくなることが検証されていれば、違った結果だったかもしれません。

ちょうど桐生市問題が話題になっていた時に、群馬県では群馬の森の「朝鮮人追悼碑」が撤去されました。

桐生市問題は生活保護の歴史に残るような事件です。「報告書」は「追悼碑」のような物理的なものではありませんが、これからも多くの人に読まれ、反省や教訓が語られつづけるでしょう。そのような「報告書」が外国人の存在を抹消していることの意味を改めて私は問いかけたいと考えています。

【参加者募集】『社会福祉実践とは何か』読書会

『社会福祉実践とは何か』の写真


『社会福祉実践とは何か』オンライン読書会

 

横山登志子編『社会福祉実践とは何か』(2022,放送大学教育振興会)の読書会を開催いたします。

本書は3部構成になっています。

初回は8月6日(水)19:30より開催いたします。

範囲は第Ⅰ部を取り扱いたいと考えております。

オンラインミーティングのアプリはZOOMを使用します。

情報保障につきましては現在のところZOOMの字幕機能を考えております。

他にご提案などがございましたらお手数ですがご連絡いただけたら嬉しいです。

iRig2(故障しているかも!?)と予備のPCがあります。

「反抑圧×フェミニズム×ソーシャルワーク」勉強会のようなものを私自身はしてみたいと考えています。

今後の継続性や企画はまだ未定なのですが、ひとまず本書の読書会に興味がある方は次のフォームよりご登録をお願いいたします。

セーファースペース(より安全な場)を創り続けられるよう皆さまのご協力をお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

docs.google.com

泉佐野市の日本一ひどい生活保護広報

泉佐野市の生活保護制度を紹介するホームページ(以下「HP」と略します)を見ると内容的にとてもひどい内容でしたのでここで記しておきます。

主な内容は上記にまとめましたが、まずはHPを見ていただければいいと思います。

生活保護のしおり/泉佐野市

今後のHPの内容が変更されることもあるかと思いますので、現状のスクリーンショットも貼っておきます(というか一刻も早く内容を変えてほしい)。

泉佐野市の「生活保護のしおり」

生活保護について、「真に生活に困った場合に」「1日も早く自分たちの力で生活できるよう」と記載されているという全国の問題ある福祉事務所でよく見かける問題は当然ながら踏襲しています。

また、扶養照会について扶養照会をしなくて良い範囲を明示していません。このHPの最終更新日は2021年8月です。扶養照会は生活保護利用を忌避させているとして、厚労省も2021年の2月と3月に通知を出して変更しました。そのような状況の中で、あえて扶養照会について詳しく書かず、扶養照会を送る範囲も明示されていないのであたかも全員に扶養照会を送るかのようにも読める内容となっています。

「指導や指示は必ず守らなければなりません」と記載があります。しかし、これは生活保護法27条2項と3項が存在しないかのような内容になっています。

審査請求期間が「60日以内」と記載されていますが、行政不服審査法の改正により2016年から3カ月以内に改正されております。HPの最終更新日が2021年なので更新したタイミングにおいてすでに誤った記載となっています。

さらに、「わがままや、身勝手な生活、まわりの人から非難を受ける生活は、道義的にも許されません」と記載されています。これが個人的に最大の衝撃です。法制度の説明を行うのではなく、道義上の責任について市のHPに記載しています。しかも、この道義上の責任って根拠はどこにあるのでしょうか。

そして、さんざん生活保護の利用を忌避させるべく生活保護制度の歪んだ説明を行ったうえで、「最後に・・・」という部分で、「『生活保護』のしくみについて説明しましたが、もう一度、自分たちの力で生活できないかよく考えてください」と記し、どこまでも生活保護を利用させたくない気持ちがにじみ出ているようです。

個人的に泉佐野市のHPにて問題と思った内容について、以下に記しておきました。

泉佐野市の保護のしおり.pdf - Google ドライブ

 

「生活保護のしおり」のこれまでの過程

生活保護の広報のあり方が大きく問われはじめたのは、いわゆる小田原ジャンパー事件後の小田原市の「生活保護行政のあり方検討会」ででした。「生活保護のしおり」の改善が行われました(通常は「生活保護のしおり」というのは冊子を示すことが多く、泉佐野市の場合は生活保護制度の紹介をするHPのタイトルが「生活保護のしおり」なので混合するかもしれませんが留意ください)。

小田原市の「生活保護行政のあり方検討会」の第2回会合の議事概要より、「元生活保護利用者」として検討メンバーに入っていた和久井みちるさんの指摘が重要かと思いますので一部抜粋いたします。

○ 保護受給者のうち高齢者が半分以上で、障がいを持った方、教育の機会が満たされなかった人もたくさんたどり着いてくるので、大きな文字でルビを振って作っている自治体もたくさんある。できるだけ平易な言葉を使うことが大切。市民に向けて語りかけている広報の一つだとするならば、非常にわかりにくい。

○ 保護を受けている人の権利というページにすら、保護内容が変更されるよ、こうしないと保護を打ち切ってしまうよというトーンが非常に強く、非常に苦しんで困って辿り着いた申請者の方に、「もう大丈夫ですよ、市役所のケースワーカーがあなたを応援しますよ」というメッセージはどこからも伝わってこない。やっと助かるのかと思ってこれを渡されると思うと、正直涙が出そうな感じがして、困ったときにこれをみたら「もういいや」という気持ちになってしまうのではないかと思う。 

○ これがすべてではないということをきちんと書くことが大切。扶養照会がすごく強調されており、DV被害を受けてきた被害者には、扶養照会が非常に怖くて厳しい背景があるが、このしおりを見ると「小田原で申請した人は絶対に扶養照会をやるんだ」と感じる。事情のある方はきちんと配慮されていることを、必ずどこかに記載していただきたい。 
○ 義務のページに扶養照会とあれば「それは義務なんだ」と思ってしまう。「仕送り等援助が受けられるよう親族との良好な関係を築いてください」とあれば、「えーっ、どうすればいいのか」と思ってしまう。当事者からするとそれができずに、親族にも頼れなくてボロボロになってたどり着くのが生活保護なので、「これをしないと生活保護は受けられません」というトーンの方が強かったら絶望するしかない。小田原の美しい海に飛び込んでしまったらしんどいと思う。 
○ 厳しいようですが、市民にやさしい行政になってほしいということからすると、市民に施策内容を説明するしおりは、精査して丁寧に作りこんでほしい。できるだけ早い段階で、言葉の表現や、何を優先して市民に発信するのかから検討し直してもらえたら。  

大野慶「生活保護行政における前手続き的権利の保障:長野県内全28福祉事務所の『生活保護のしおり』の分析を通じて」『こども学研究7』(2025,長野県立大学健康発達学部こども学科)にて、大野さんが長野県の全ての福祉事務所の「生活保護のしおり」を分析し、問題点を指摘したうえで、次のように文章を締めています。

生活保護行政が市民の前手続き的権利を実質的に保障するためには、福祉事務所における情報提供のあり方を問うだけでなく、生活保護の予定する対象者の制度認知や情報ニーズを的確に把握することも必要である。その上で、情報提供のあり方と対象者のニーズとの間に存在する溝を埋める取り組みが求められる。これらの課題の検討は他日を期して行いたい。

大野慶さんがいう「生活保護の予定する対象者」は、制限的な生活保護の広報を見ると、「もういいや」と絶望し、生きる希望を失ってしまう可能性があることを和久井みちるさんは示唆しています。生活保護に関する情報を検索して、各自治体の生活保護の広報や窓口にたどりつく人はどういう人なのか。それを想像することが重要ではないか。泉佐野市は2021年から4年間で一体どれだけの人を絶望させてきたのだろうか。「情報提供のあり方と対象者のニーズとの間に存在する溝を埋める取り組み」が急務ではないだろうか。

 

ひどい生活保護行政として桐生市が話題となった。その時に群馬県内の自治体を調べると、沼田、富岡、安中市ではそもそも生活保護のHP自体が存在していませんでした。それを私もブログにしましたし、ちょうど同じ時期にニュースにもなっていました。

また、桐生市は群馬県の生活保護のしおりを使っており、群馬県の生活保護のしおりに問題があり、改善を求められて改善されました(現状では不十分な点があると思いますが…)。

生活保護の情報、HPに載ってない 「国民の権利なのに…」群馬県内の3市で:東京新聞デジタル

群馬県「生活保護のしおり」改訂 利用者の立場にたった表現へ [群馬県]:朝日新聞

 

泉佐野市のHP作成過程への疑義

泉佐野市はいったいどのような目的でこのHPを作成しているのだろうか。生活保護制度の法的な説明することが目的ではないだろう。なぜなら生活保護法について誤った説明ばかりだし、法的な説明にとどまらず「道義的」な話にまで及んでいるのだから。

最終更新日の2021年8月はもともとあった内容を少し更新したのか、刷新をしたのか、決裁はどのように回って一体誰が最終決裁権者だったのか、最終更新日が2021年であり、一体なぜ放置され続けているのか。

そして、こんな生活保護の広報をしている自治体の生活保護制度の運用にはたして問題はないのだろうか。権利侵害は行われていないのだろうか。

責任の所在について

最大の責任はもちろん泉佐野市にある。

しかし、大阪府と厚労省には、2021年から放置しつづけている責任、生活保護行政をチェックする機関としての責任も生じてくる。

2022年3月の「令和3年度 社会・援護局関係主管課長会議資料」の「資料2:保護課」の25頁(PDF上では32頁)では次のように指示されています。

生活保護制度を案内する各地方自治体のホームページやしおりについても、内容に不適切な表現がないか、制度改正などが反映されていない点がないかなどを点検いただくとともに、こうしたことにより相談者に申請をためらわせることのないよう引き続きご対応をお願いする。

さらに、『生活と福祉』(全国社会福祉協議会)の2022年5月号において、監査指導室が「令和4年度における生活保護指導監査方針」というタイトルで監査方針が説示されており、その10頁に次のように記載されています。

一部の実施機関において面接の際に活用する「保護のしおり」の内容について、申請権の侵害につながる恐れのある表現が含まれているものが認められている。本庁の監査においては、面接相談の内容検討を行うとともに、相談者へ交付ないし提示する書面等を含めた関係書類も十分確認の上、問題点を把握し、具体的な指導をお願いする。

2021年8月から少なくとも2022、2023、2024年の3回は大阪府か厚労省かの監査を受けているはずである。どのような監査結果だったか気になるところではあるが、こんな最悪な広報を見過ごした責任は重い。

さらに桐生市の生活保護行政の問題においても指摘されていましたが、市議会によるチェック機能がどうであったかという問題である。コロナ禍以降に、厚労省が生活保護は権利である旨を広報し、各自治体も生活保護が権利である旨の広報をするところが増えてきている。実はこれは議会での働きかけがきっかけの場合が多い。

泉佐野市では市議会でどのような生活保護行政が望ましいのか議論があったのか、そもそも議会で関心が寄せられていなかったのか、どうなのだろうか。

私自身は情報公開請求など積極的に動く予定は今のところありませんが、もしする方がいらっしゃったらできる協力はしますのでよかったら教えてください。

※私の独断と偏見で泉佐野市を日本一ひどい生活保護広報って言っちゃったけど、もし他にもっとひどい生活保護広報があれば教えてください。

※6/9、審査請求期間について記入を漏らしていたので追記しました。

生活保護世帯の積立貯金と生活福祉資金

生活保護利用世帯で積立貯金がある場合に、生活福祉資金の就学支度費の貸付制度を利用すると、貸付金額から積立貯金額が減額される所と減額されない所があり、取扱いに差があることがわかりました。

docs.google.com

 

生活福祉資金の就学支度費について

大学等の入学資金について生活福祉資金の就学支度費という制度がある。就学支度費は50万円を上限として、大学等の入学金などの入学に際して納入する必要がある費用について貸付を受けることができる。奨学金に関しては入学後に初回の振り込みが始まるのが主流なため、大学入学に際して必要な費用を工面する手段として生活福祉資金の就学支度費は重要になっています。

全国社会福祉協議会のHPによると「本貸付制度は、都道府県社会福祉協議会を実施主体として、県内の市区町村社会福祉協議会が窓口となって実施しています」とされています。そのため今回は実施主体である全国の都道府県社協のうちHPにて問い合わせ先が確認できるところに問い合わせを行いました。

なお、実施主体が都道府県社協、窓口が市町村社協、そして生活保護利用世帯が生活福祉資金を利用する際には福祉事務所から社協に意見書を提出します。

 

生活保護利用世帯の高校生等のアルバイト収入

生活保護利用世帯では収入に応じて収入認定される。ただし、高校生のアルバイト収入については,20歳未満控除等の勤労控除、高等学校等就学費の支給対象外経費(学習塾費等を含む。)、就労や早期の保護脱却に資する経費等が収入認定除外とされる。つまり、生活保護費を減額しないでおける。

以下は、厚労省が作成している〇カツからの一部引用です。

 

 

就労や早期の保護脱却に資する経費とは、次の6つです。

(1) 自動車運転免許等の就労に資する技能を修得する経費

(2) 就労に資する資格を取得することが可能な専修学校,各種学校又は大学に就学するために必要な経費(事前に必要な受験料(交通費,宿泊費など受験に必要な費用を含む。)及び入学料や前期授業料等に限る。)

(3) 就労や就学に伴って,直ちに転居の必要が見込まれる場合の転居に要する費用

(4) 国若しくは地方公共団体により行われる貸付資金又は国若しくは地方公共団体の委託事業として行われる貸付資金の償還金

(5) 就職活動に必要な費用

(6) 海外留学に必要な費用

これらを収入認定除外とする場合には「取扱いにより生じた金銭について別に管理することにより,明らかにしておくよう指導するとともに,定期的に報告を求め,当該金銭が他の目的に使用されていないことを確認すること」とされています。

アルバイト収入の振込口座をこの積立貯金の口座とする場合が多いです。振込込口座から積立用口座へお金を移すために手数料がかかることを避けるため、生活保護利用者にとってはいくらが収入認定されるべき金額であったかがわかりにくい(上述の画像の例であればためその金額のみを別立てで貯金するのは不便なため。

上述の〇カツの例でいえば、40,000円のアルバイト収入のうち、7,600円が「就労や早期の保護脱却に資する経費等」として収入認定除外が認められる金額であり、32,400円は本来であれば使途が限定されていない勤労控除(基礎控除、20歳未満控除など)や必要経費である。つまり、アルバイト収入全額を積立貯金した場合は貯金の大半は使途が限定されないお金であることに留意したい。

生活保護利用者が大学等(夜間大学等を除く)に入学した場合には、世帯分離がされることとの兼ね合いから、大学等の入学時以外にかかる経費に関しては収入認定除外する取扱いが認められていません。大学生の世帯内修学を認めていないため生活保護費が就学費に充てられてしまいます。

大野慶「生活保護世帯の子どもの高等教育「修学」機会 : 「実施要領」の分析を通して」(教育福祉研究 24 59-71 2020年2月  )では次のように論じられています。

子どもの高等教育「修学」機会の基礎となる生活基盤に関して、生活保護制度は「何も」事前に調達することを認めていないことがわかる。

子どもの高等教育「修学」機会の基礎となる生活基盤に関して、生活保護制度は概して支えとなり得ないと言える。そして気になるのは、生活保護制度が子どもの高等教育「修学」機会の達成の一助とならないばかりか、「住居費」、「生活費」、「教育費」に関して費用保障が不十分であること、に加えて事前の費用調達すら認めないことにより、むしろその「足枷」となっているのではないかということである。

とはいえ、勤労控除を貯金に回したお金に関しては、「就学」のみならず「修学」に充てることも可能です(もちろん本来的に使途が限定されるものではありませんので、「就学」以外の用途で使用することも可能です)。

また、大学等を卒業して生活保護利用世帯に戻ってきた場合に、生活福祉資金の就学支度費の償還額は収入認定除外することができます。

生活保護ケースワークについて

生活保護利用世帯で高校生等がいる世帯については、〇カツの配布、収入認定の取扱いの説明、大学等への進学を希望する世帯には世帯分離の説明を行っています。

監査の実施要綱にも収入認定除外の取扱いが周知がされているかが含まています。高校生等へのケースワークにとって重要な位置づけとなっています。

NHKドラマ「むこう岸」という生活保護をひとつのテーマにしたドラマの中で主人公たちが自分で生活保護手帳を読んで収入認定除外の取扱いを調べるシーンがあるようです。しかし、本来は生活保護ケースワークの一環としてこの情報は周知されるべきでしょう。

とはいえ、福祉事務所も夏休みや冬休み期間に訪問するなどの工夫をしているものの高校生等に直接面談をすることが難しく、世帯主などを通じて周知がされることも多いかもしれません。三宅雄大『「縮減」される「就学機会」――生活保護制度と大学等就学』(生活書院)において生活保護ケースワークで世帯主に情報提供したその情報の世帯内でどう伝達されていくかが述べられていたように思いますのでこの点に興味のある方はどうぞ。

生活福祉資金に関する回答内容の検討

生活福祉資金の就学支度費の貸付を利用したい場合に生活保護利用世帯が積立貯金をどのように取扱うでしょうか。

私の問い合わせ内容は次のとおりです。なお、各都道府県社協から問い合わせ可能なところへ問い合わせをしました。群馬県社協など一部の社協には問い合わせしておりません。

【生活福祉資金の教育支援資金に関する問い合わせ】
生活福祉資金の教育支援資金を利用する際に、生活保護世帯の高校生がアルバイト収入を積立貯金していた場合の取扱いについてお尋ねします。
貸付額の決定に際して高校生の積立貯金があることを把握した場合には積立貯金額を差し引いて決定しますか。また、その際の根拠を教えてください。
例えば就学支度費として大学等に入学する際に50万円が必要だった際に、高校生等の積み立て貯金が30万円あったことを把握した場合には、貸付額を20万円にしますか。
ご教示いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

 

この問い合わせへの回答を冒頭にも示しましたが改めて以下のリンクです。現時点の回答結果ですが随時更新してきます。

生活福祉資金問い合わせ一覧 - Google スプレッドシート

 

北海道、秋田県、栃木県、福井県、宮崎県は原則として積立貯金を生活福祉資金から減額しないと回答をしてくれました。

奈良県、鳥取県、岡山県は、逆に、原則として積立貯金を生活福祉資金から減額すると回答しました。

岡山県社協は「原則として、その貯蓄を学費に充てていただき、その分貸付額を減額して決定することになります」とし、「具体的な根拠はないと思われますが、 生活保護上進学を前提に貯蓄が認められていること、貸付額を減額することで将来の学生の負担を軽減できることを踏まえ、 このような運用を行っているところです」と根拠がない運用している旨を教えてくれました。

一方で、岐阜県、福岡県、宮崎県は「生活福祉資金貸付制度要綱の第5貸付金額に『~借入申込者における資金の使途や必要性、償還能力等を勘案の上、真に必要な額について決定するもの~』」とされていること根拠に、機械的に判断しないことを明示しています。

このように各都道府県社協によって生活福祉資金の取扱いは大きく異なっています。生活福祉資金の実施主体は各都道府県社協となっています。青森県や東京都はそのため都道府県によって運用が異なる旨を明示しています。しかし、個別具体的な事例にて判断に差異があるどころか、一般的抽象的な質問に対しても真逆の結論を取る社協があって良いのでしょうか。しかも、生活保護制度の積立貯金の取扱いに差異があるということは、ナショナルミニマムが都道府県社協によって異なってしまうことになります。

生活福祉資金の貸付制度について実施主体である各都道府県社協に問い合わせをしてみました。しかし、窓口である市町村社協への相談を促す社協が多かったです。責任の所在が極めて不明瞭な制度です。しかも、審査請求などができる制度ではなく、権利性がありません。個別具体的に相談で決めるという都道府県社協が多いですが、果たしてお金を貸す側と借りる側の圧倒的な権力勾配がある中で、貸付を利用する世帯は高校生等で年齢差もある中で、対等な関係性の中での相談結果と言い切れるでしょうか。

都道府県社協ですら生活福祉金の貸付制度の在り方について振れ幅が大きいので、窓口である市町村社協はもっと極端かもしれません。「学生のために貸付金額は極力少額であるべきだ」という前提で面談されたら相談結果をコントロールしうるのではないでしょうか。

また、滋賀県社協のように生活保護ケースワーカーへの相談を促す都道府県社協も多くありました。この点、滋賀県健康政策課からは「生活福祉資金の教育支援資金に関してですが、当該資金は収入要件は定まっておらず、また、社会福祉協議会においても積立貯金額等の資産額を把握することは実質的に困難であるため、貸付金を減額することはないと思われます」と回答がありました。このように福祉事務所にとっては積立貯金額分を減額することはないと考えているものだと思います。

都道県社会福祉協議会は実施主体として責任ある回答をせず、窓口である市町村社協や意見を述べる福祉事務所に責任を割り振っています。「我が事・丸ごと」の地域福祉と言わるが、実施主体である自らの主体性を放棄し、他人事のように回答する姿勢に地域福祉が強調される社会福祉の深い問題を感じずにいられません。

まとめ的なもの

生活福祉資金の就学支度費を利用する場合に、生活保護利用世帯の積立貯金の取扱いに都道府県社協によって差異があることがわかりました。

各都道府県社協によって取扱いの差異がなくなるような明確な通知を発出して、各都道府県社協の統制を図ることがひとまずの急務だろう。

「むこう岸」は生活保護制度をフル活用して進学するものだが、生活保護制度が生きるためには周辺の制度改善も必要です。

生活保護利用世帯は他に活用しうる資産や他者からの援助は相対的に期待しづらい状況にあります。大学等に「就学」するために資産を費やすことで、「修学」のために必要な生活費、住宅費などが無くなってしまう可能性があります。「就学」にあらゆるリソースを割くことは「修学」を侵害します。

より大きな展望としては大学生等の生活保護を利用しながらの世帯内「修学」を認めるべきです。世帯内修学を認めていないからこそ「就学」にあらゆるリソースがかけられてしまいます。「修学」のための積立貯金が認められるようになるべきです。さらに生活福祉資金の「就学支度費」の償還は収入認定除外することができますが、「教育支援費」は収入認定除外できないとされています。これは大学生等の世帯内修学が認められていないことと関連しているとされています。

また、生活福祉資金という権利性のない制度ではなく、生活保護制度の中で例えば中学や高校などと同様に入学準備金を整備するか、入学前の費用の給付を別建てで拡充すべきだ。

「生活保護Q&A」を廃止していた群馬県

群馬県の生活保護行政の各種問題

都道府県や政令指定都市では運用事例集を作成しています。桐生市の生活保護行政の問題が報道されてから、生活保護をホームページで全く周知していない自治体があったり、警察OBを就労支援員として配置している自治体が桐生市以外にもあったり報道されています。

 

さて、群馬県は桐生市の生活保護行政の問題の中で分割支給に関して通知を発出したそうです、

 

今はこの通知の存在は皆が把握しているでしょう。しかし、人事異動で職員が入れ替わった時にある時に1度だけ発出された通知がどれほど福祉事務所で共有されつづけるだろうか。群馬県の生活保護行政の歴史に様々な事件を刻み続けること、忘却に抗うことが必要だと思います。

 

各都道府県と政令指定都市では生活保護の運用事例集といって、国からの通知ではわかりづらい点の運用の在り方を示すものを出しています。

wedge.ismedia.jp

上述のブログでも引用されている大山典弘氏の論文によると群馬県も「生活保護Q&A(実施要領篇)」という物を出しているようです。そこに分割支給がどう書かれているかの確認と今回の通知の内容を反映させるよう要望を出すべく情報提供依頼のメールをしました。

 

運用事例集を廃止した群馬県

群馬県の地域福祉課からのメールを以下に引用します。

【御依頼】
 下記の生活保護関係の情報の提供をお願いする。
  ・生活保護Q &A(実施要領編)
  ・各福祉事務所宛の生活保護運用にかかる通知集
 
【回答】
 生活保護Q&A(実施要領編)について、生活保護法令・実施要領・別冊問答等の処理基準に基づき事務を行うことが原則であるとの考えから、平成31年3月に廃止しており、現在はございません。
 また本県では、各福祉事務所生活保護運用にかかる通知集のようなものもございません。
なんと・・・。
群馬県の運用事例集か通知集に今回発出した分割支給の通知を載せてほしいと要望する側にとっても対応する側に簡単な要望を個人として出そうと思っていたのですが…。
運用事例集は県内の福祉事務所を支援する意味合いもあります。運用事例集があることによってより適正な運用が図られます。熊本市の運用事例集では厚労省に電話照会をした内容も載せています。今ここで困っているケースワーカーがいるならば、他にも同事案で困っているケースワーカーがいるかもしれないし、未来のケースワーカーも困っているかもしれません。群馬県からは県内福祉事務所を支援していこうという意志を全く感じられません(ちなみに別冊問答集の法的位置づけは「技術的助言」であり、「処理基準」ではありませんので群馬県のメールの内容は法的に誤りです)。